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1452 グッドラック [詩・エッセイ]


グッドラック


街に雪の降る寒い朝であった。

 あの独特のスタイルで首を前後に振りながら、

一握りの糧を求め、

行楽地に向かう人々がごった返すモータープールの中を歩いている。

その姿は、

施しを断られても、断られても、悪びれることもなく、

寒風吹き荒ぶ貧しい村を素足で行脚する修行僧のように見えた。  

左右に体が大きく揺れる鳩の足元を見れば、

犬か猫にでも咬まれたのか?

それとも、

生れながらのものなのかは知る由もなかったが、

右足は短く、歪に引き攣り、湾曲しているから、

果たして飛ぶことはできるのだろうかと訝しく思った。

なおもその鳩は、

美食を求め、景勝地を求め、温泉地を求め、

何もすることの無くなってしまった有閑爺と、有閑婆たちが群れを成す

モータープールの中を、

生き抜くために必死になって足を引き摺りながら、

ときどき首を横に傾げ、

一人一人に頭を下げで行脚する。

歩いても、歩いても、五分たっても、十分たっても、

その鳩は一握りの糧も得ることはできなかったが、

それでも鳩は根気よく、一握りの糧を求めて歩き続けた。

私は我慢できずに、

非難されるのを覚悟で、

カバンの中からピーナツの袋を取出すと一粒ずつ与えた。

鳩は貪るように食べ続け、与えなかったら私の指を突いて催促をする。    

それを何処かで見ていたのか、

小さな雀が一羽寄って来たので、

ピーナツを細かく砕いて路面にばら撒いてやったら、

鳩と雀は、喧嘩もせずに仲良く啄み始めた。

バスに乗る時間になったので、

鳩と雀を近くの草むらに誘い、残りのピーナツをばら撒きながら、

私は気取って呟いた。     

「グッドラック」と。     



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1451 春のお茶 [詩・エッセイ]


「春のお茶」

すっかりご無沙汰をしてしまい、

もう忘れられてしまったのではないかと心配をしています。

インフルエンザの後遺症なのでしょうか?

頭がスカンポのようになり、

体調も悪くてゴロゴロしておりました。

だけど、

もうすぐ春です。

桜の蕾も、ふっくらとふくらんでいます。

花が咲くのも早そうですね。


桜の花と言えば、

四月八日は、

お釈迦様のお生まれになった日です。

そのお釈迦様の像に、

甘茶をそそぐのが灌仏会です。

花祭りとも、花供養ともいいます。

その甘茶は、ほのかに甘いお茶でした。

だけど、本物のお茶ではなく、

紫陽花の木の仲間で、

オオアマチャというものと、アマチャズルで作るのです。


甘いものに飢えていた子供時代、

この甘茶を、

お寺の人たちに一升瓶に入れてもらい家に持って帰るのが嬉しかった。

今の子供たちに、

そんなことを言っても理解してもらうのは難しいでしょうね。

でも、私は飲みたいです。

あの、ほのかに甘い香りのする

春のお茶を



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