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1458 予期せぬ出来事 [詩・エッセイ]


「予期せぬ出来事」


テレビの天気予報で、

兵庫県南部は16時から朝にかけて雨が降るとの予報であったので

11時過ぎに畑に行った。

空は厚い雲に覆われてはいたが明るいところも多く、

雨が降るのは予報通りだと思った。


それにしても

育ちざかりの雑草の勢いはすさまじく、

ついこの間雑草は引いたばかりなのに、

脇役である筈の雑草は主役をそっちのけにして我が物顔で威張り散らしている。

それから二時間くらい、

水も飲まなければ休憩もせず汗だくになって草引きに熱中した。


パラパラと傍の茄子の葉っぱを叩く音で

雨が降り始めたのに気付いたのであったが、

大したことはないすぐに止むだろうと思いながら草取りを続けていたら、

空の色は刻々と変化して鉛色になり、

大粒の雨とともに激しく降り始めたので、

掘っ立て小屋に避難した。


兵庫県南部の天気予報は当たらないと常々思っているのに、

つい信用してしまったのが運のつきである。


大粒の雨は畑の土を激しく叩き、

瞬く間に泥の河になり、

瞬く間に畑の畝と畝との間を泥水で満たし、

まるで城の堀のようになってしまった。


風が吹き、

間断なく降る雨はさらに激しくなり、

雷鳴まで轟きはじめ

吹き抜けになっている掘っ立て小屋も水浸しになってしまった。


近くに人家とてない辺鄙な所にある畑で、

私は久しぶりに恐怖のようなものを感じたのであった。





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1457 プロローグ 白い帽子 [詩・エッセイ]


小説「神田神保町」の第一稿が出来上がったので、

記念にプロローグだけ掲載します。


「プロローグ・白い帽子」


フリルの付いた白い帽子は

まるで白鳥が舞い降り立ったかのように

河で遊んでいた

僕の目の前に降り立っていた

見上げると

屋根のある橋の上に

歳も小五の僕と同じくらいなら

背丈も同じくらいの女の子が

二人並んで立っていた


二人とも清楚なワンピースも同じなら

たぶん

白い帽子も同じものなのであろう

一人は被り

もう一人は被っていなかった


帽子を被っていない方の女の子は

白い帽子が落ちる方向を見定めてから

河原に向って走り出し

僕も

拾った白い帽子を手渡そうと

素足で水を切りながら

河岸に向って歩いた


僕は

河岸に這い上がり手渡そうと待っていたら

近付いて来た女の子は

夏草に足を取られて つんのめりながら

河の中に落ちそうになった

僕は慌てて

女の子を抱きとめた


僕の両腕の中にある女の子は

この里では見たこともないような

スラリとした長い脚に

白く透き通った白い肌

黒目勝ちの大きな瞳に白い歯の

美しい少女であった

僕は

その都会の女の子の美しさに圧倒されていた。


その女の子は囁いた


「河に落ちそうになったところを助けてくださり、

ありがとう、

帽子も拾ってくださり、

ありがとうございます」


都会的な美しい少女に

礼儀正しく挨拶されたのに

僕は

田舎の少年らしく

しどろもどろだった


あれは

はるか遠い日の

わたしの初恋

あのドキドキした胸のときめきを

わたしは忘れない




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