1475 かあちゃんの匂い [詩・エッセイ]
「かあちゃんの匂い」
にわか雨が降りだすと子どもたちの
雨傘は
サトイモの大きな葉っぱ
赤ちゃんの涙のような水の玉が
つるりんこんと滑って
空に飛んで行く
カンカン照りの晴れた日には
野良仕事で
顔も服も汗だらけのかあちゃんに
サトイモの葉っぱに
冷たい湧き水を汲んで持って行く
大好きなかあちゃんの歓ぶ顔が
見たいから
水のこぼれる跡を畑につけながら
そろりそろりと
持って行く
「おぉー、これは御馳走、甘露、甘露」
と言いながら
かあちゃんはお日様の真下で
零れそうな笑顔と一緒に
ゴックン ゴックン
と 喉を鳴らし
舌を鳴らし
美味しそうに飲んでいる
抱きつくと
汗の匂いと
草いきれの匂いと
かあちゃんの匂いがした