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1512 風になろう [詩・エッセイ]
風になろう
風になって
自分の中に潜んでいる
澱んだ汚いものを
吹き飛ばそう
風になって
心の傷を癒しながら
自由に
奔放になって
本当の自分を探す旅に出よう
もう
後悔したり
怒ったり
悲しんだり
嘆いたりするのは
止めて
新しい風になって
新しい自分を創ろう
ただ前を見つめる
風になって
1511 赤い雲 [詩・エッセイ]
これは阪神淡路大震災のあった直後、
五十歳になって生まれて初めて書いた詩文らしきものです。
「赤い雲」
まだ仄暗い夜明け前
その空には
雲が赤く妖しく光っていた
安住の地と思いし
神の戸で
平成七年一月十七日午前四時四十六分
天魔が嗤った
大地は裂け
紅蓮の炎は天を焦がし
人々は阿鼻叫喚の地獄絵を見た
崩れた我が家に挟まれた老いた父
必死の形相で助けようとする
妻 娘 息子
容赦なく迫りくる炎
「早く逃げろ早く わしの分まで生きてくれ」と父
「父ちゃんゴメン 許して 許して」と妻
泣き叫ぶ娘と息子
その聲の中を悪魔の炎が襲った
成すすべもなく
ただ茫然と立ち竦む
ああ神や仏よ
貴方はこの世におわすのか
貴方は衆生すべての人を救済されるのが
生業であるのに
罪もなき善良なる人々が
圧し潰され
生きたまま焼かれるのを
ただ黙って
見ておられしか
神や仏よ
1510 妹のため息 [詩・エッセイ]
「妹のため息」
おばあちゃんが
小学校一年生になったばかりの孫にたずねました
「お勉強は好きですか?」
「それがねぇ、おばあちゃん、
出来んのよ、この子は。
ちっとも勉強をしないの」
傍にいた
三歳になる妹が
ため息をつきながら小姑のように答えました
「この子は夜になると
一人でオシッコにもいけないのよ。
いつも私が付いて行くの。
私がいなくなると、
早く来てオシッコが出ないって大きな声で泣くのよ。
本当に困った子なの、おばあちゃん」
妹の美菜ちゃんは
お兄ちゃんの手を握りしめながら
睨みました
1509 風の色 [詩・エッセイ]
「風の色」
春は
若草の萌える色の 青
夏は
咲き乱れる花の色の 朱
秋は
透き通った高い空にある薄い雲の色の 白
冬は
奥深く明りの及ばぬ処の色の 玄
遥か古の
万葉の歌詠み人たちは
風に色を見たという
きらめく陽光に草木のざわめきに
自然のありのままの風景の中に
長閑なぬくもりに安らぎを見つけ
荒ぶる雨に 雪に 雷に わななきながら
吹き荒ぶ吹雪に 嵐に おののきながら
折々の季節の中に
風の色を見たという
移り行く美しい風景の中に
光と影が去り行く中に
風の色を見たという
1508 月見草 [詩・エッセイ]
「月見草」
暗闇に
月の光を浴びて
艶然と微笑む
月見草
陽が落ちて
暗くなりはじめると
項垂れていた
皴皴の蕾がほどけて
ぷつぷつぷつと音をたてながら
見る見るうちに花になる
その黄色い可憐な姿は
薄倖の佳人のように
憂いを秘めて立っている
父の好きだった
月見草
幼いときに死んだ父
あれから半世紀もとっくの昔に過ぎてしまい
父は私より
遥か年下になってしまった
1507 夕立 [詩・エッセイ]
「夕立」
轟く雷鳴に草木は揺れ
囲炉裏の鍋が引っくり返って
灰神楽が立ったような大雨だった
そんな夕立が街を通り過ぎると
街の汚れは綺麗さっぱり洗い流され
清々しい街になって帰って来た
古い建屋も新しい住居も
路地裏の植木や盆栽も
街路樹の青々と茂った葉っぱからも
水滴がしたたり落ちて
風に光る
雨上がりの空は茜色
夕暮れの街を赤く染めて行く
濡れた歩道に
水溜りに
街をとおる風にも
嫋やかなる色をつけて
1506メタセコイヤ [詩・エッセイ]
「メタセコイヤ」
メタセコイヤの木立は
美しい
空に向かって真っ直ぐ立ちながら
わきめもふらず
天まで登ろうとしている
春になると
緑あざやかな衣装をまとい
颯爽として
凛々しい
若武者になる
秋になると
衣の色を
枯れ草色に染めて
古武士の風格となり
やがて落葉する
メタセコイヤの木立は
美しい
遥か遠い異国より来たりて
逞しく生きる
1505 そよ風の道 [詩・エッセイ]
「そよ風の道」
わたしの体の内と外で蝉の声がする
カンカン照りの陽の下で
汗だくになって野良仕事をして
山小屋の壊れかけた椅子に座ると
何処からともなく
そよ風が吹いて来る
まるで岩清水のような涼しさだ
だれの目にも見えない
そよ風は
何処から吹いて来るのだろう
大地に
人が造った道があるように
きっと
そよ風にも
風が作った
風の道があるのだろう
1504 バスタブの水草 [詩・エッセイ]
「バスタブの水草」
PCの具合が悪くてご無沙汰をしてしまいました。
このバスタブの水は農業用水として使っていますが、
その中に生えている水草は水の浄化用に入れたものです。
このバスタブは3つあるのですが、
あとの2つの水草は日当たりの良い順番に消滅してしまい、
隆盛を誇って残っているのはこのバスタブ1つになってしまいました。
人間でもそうなんですが、
生き物にとって、
如何に環境が大切であるかを教えてくれる現象だと思いました。
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