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1449 そして誰もいなくなった [詩・エッセイ]


「そして誰も居なくなった」


里に

人が一人いなくなり

二人いなくなり

牛のゲップの音も

馬の嘶きの声もしなくなり

お店がなくなり

電車もバスも走らなくなりました


里に

赤ちゃんの泣き声がしなくなり

子供たちの甲高い喚き声も聞かなくなり

学校は廃校になってしまいました

春と秋が来なくなり

夏と冬だけになりました


里に

残ったのは

お爺さんとお婆さん

そして

目脂をつけてよろよろと歩く猫と

涎を垂らしながらよたよたと歩いている犬だけでした


里で

灼熱の夏にお爺さんが亡くなり

厳冬の冬にお婆さんも亡くなりました

よろよろ歩いていた猫も

よたよた歩いていた犬も

同じように亡くなってしまいました


そして

里には誰も居なくなり

残ったのは

荒れ果てた山と 田圃と 畑と 墓石だけでした


そして

里の主になったのは

虫と

鳥と

獣たちと

あてどもなく彷徨う魂を乗せた

風と

雲だけでした

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